開発にいたるまでの経緯を克明にリポート 前編



高田大暉 Hiroki Takada

1974年 東京生まれ
大学を卒業後、金融業界へ進む。
その後、飲食業界を経て不動産業界へ。
2011年 株式会社ロブス設立
家具の設計デザイン、および自然素材を使った住空間のトータルプロデュ-スを行う

ROBUSは代表の高田大暉が自身の家づくり、空間づくりでの経験をもとに、 家具にとって何が重要かの気づきからスタート、永く愛着を持って使われる家具の製作を目指して設立されました。 心地いい空間、何気ない時間を愛し、それを大切にするための素材、技術、デザインにこだわる。


僕は家具が好きで、くつろげる空間や時間を大切にしているのですが、だからこそ今の家具のあり方に疑問があってROBUSを立ち上げました。 僕は家具職人ではありませんが、これまでに多くの住空間づくりに携わり、 そこでの経験や疑問から、使う立場で家具をデザインし、空間での姿をイメージして一つ一つの商品を作りあげています。

ROBUSが始動するまでには多くの障害もありました。さまざまな出会いに支えられてここまで来たというのが正直なところ。 僕は想像以上に完璧主義というか、とことんやらないと気がすまないタチだったようで、 ときに職人を悩ませましたが、本当に納得できる家具にたどり着けました。 試作品が1台できたのではなくて、これを気に入ってくれる人に販売させていただく体制もできた。 こうしてみなさんに届けられることを本当にうれしく思います。 とにかく話したいことがいっぱいありすぎて困るのですが、今こうしてウェブサイトにまとめることができましたので、 この開発ストーリーはもちろん、製品ページその他にもROBUSテイストがぎっしりと詰まっていますので、 ゆっくりご覧になって行ってください。 家具を好きな方、何気ない毎日を大切にする人に出会えるのを楽しみにしています。

高かった家具が壊れた

オーダー家具なんです。けっこう高かったですよ。 でも思い通りの家具が出来上がったときってすごい嬉しかった。 家に来る妻の友達からも評判良くて(笑) でもね、半年で壊れたんです。 突然引き出しが開かなくなって、あれ?っと何度引っ張っても開かない。 うん?何か引っかかってる。 よ~く見ると引き出しの底が抜けちゃってる…。 うわっ、しかも全部。 すごいショックでしたよ。 まさか壊れるとは… 『〇〇家具工房』って看板掲げてる家具が壊れる??? 大金を落したくらいのショックでした。

その半年後にはビデオを入れるフラップ扉の丁番が外れて扉は斜めに傾き、 そしていつの間にか天板のはぎ合わせ部分はパックリと開いていることに気付きました。 一年の間に次から次へと起こる不具合。普通はクレームを言うんでしょうけど、そういう気力さえなくなっちゃう完成度の低さ。 この工房で直してもらいたいという気持ちすらなくなっちゃいました。 何年も、いや場合によっては一生使おうと思っていた家具が、僅か一年も持たない事実。これでもか!っていうくらいのショックの連続。 見た目や価格にばかり目を奪われるとこういうことになるのか…って。 ホント気が抜けましたから。


家と家具

オーダーした家具が壊れて、僕が家を建てたときのことを思い出したんです。 サラリーマン時代に建てた小さな一戸建。 この家を建てるまでに建売住宅を見たり、中古の家を見たりいくつかの家を見て回った。でも何か引っかかるものがあって気持ちが動かない。 改めて考えると建売住宅に冷たさを感じたのかも。 床、壁、天井、ドア…。 どれを見ても本物の木じゃなくて木目模様のものばかり。 ようやく一軒の工務店を見つけ電話をして訪れてみると、 金額も良心的でこちらの予算やイメージを理解してくれて…。 ここなら契約しても良いかな~って感じだったのですが、柱や梁に使う構造材の話になったんです。 樹種を聞いてみると、聞いたことない樹種なんですよ。 調べてみると本来は住宅の主要部分にはまず使わない樹種で、価格が安いことからコスト削減に使う会社があるということが分かったんです。 それが実は壊れた家具と同じ樹種で、家具と家の構造材がまったく同じだったなんて。

じゃあ、自分で作っちゃえ

だったら自分で、気に入る家具を作ればいいじゃないか。すべてはそこからスタートしたんです。この家具で大儲けしたくてやってる訳じゃないし、 もともとはイメージした家具がなかなか見つからなかったから、自分でデザインを描いて工房に頼んだのがきっかけ。 自分が使いたいとも思わない製品を売る家具屋って何か違う気がして。 農家は出荷用の作物と自分たちで食べるものを分けているなんて話を聞いたことがありますが、 どうせなら自分たちが食べる安全で美味しい作物を出荷して、人にも味わってほしい。そんな思いをかたちにしてROBUSは誕生しました。

普段の生活で遭遇するさまざまな不便。それに気づいたとしてもそのまま通り過ぎるのが普通。しかしふと変えてみたくなった。 もしこうなら、どうだろう。 AVボードはただテレビを乗せてビデオが入ればいいのではなく、テレビ台にリビング収納という機能を融合させたら、 リビングはいつもスッキリ。これは重宝するのではないか。 雑誌なども散らかるリビングだけど、雑誌まで収納できるAVボードって案外ないんですよ。 家具は見た目は大事だけど、実用性を無視した飾りじゃダメ。 意外にもシンプルなところから始まるのがイノベーションの常かもしない。

工場探し

工場探しもホワイトオークを扱っている工場に絞って探したんです。 デザインだけを考えると頑丈さに妥協しなくちゃいけないところも出てくるんですが、それだけはしたくなくて。 でもこの優先順位を理解してくれる工場って意外にないんですよ。 手間がかかるし注文数も少ないから、どこも嫌がりますよね。 でも諦めないで探し続けました。 工場探しだけでも3ヶ月くらい。 全国のあらゆる工場に連絡しました。 やはりどこも相手してくれない。 メールや電話、ときには工房まで足を運んでお願いしたけど、小さい工房は自分のところで手いっぱい。 機械も少なくてやっぱりダメ。 逆に大きな工場は数を求められる。 それも100台とか200台単位。 さすがに無理ですよね。 でも諦めないぞ… みたいな感じで、もう意地になって探しました。

工場探しに四苦八苦しているころ、「出来るかも知れません」と後光のさす言葉をもらったのが今お付き合いしている工場です。 電話とメールでやり取りしながら、飛行機に乗って訪ねました。 それから商品化までに2年ですよ。 デザインや商品構成、節の規定、仕様等、いざ商品として出すとなると決めることが多くて。 まぁ、途中はお金の事情も出てきたりして(笑)

国産へのこだわり

国内生産にこだわるのも日本人としての誇りがあるし、目の届かないところで問題が起きるのが嫌だから。 いろんな家具屋さんを見ても海外生産品が多いでしょ? でも国内には腕のいい職人さんを抱えた工場が実はまだまだあるんですよ。 そういう職人の技術や日本の伝統的な工法を残していくことの一端を担えれば嬉しい限り。 職人さんを見ていても一つの製品が出来るまでにものすごい手間ひまをかけている。 『仕事』が施された家具って、職人のプライドを感じるし頑丈なんです。 やはり職人気質がいい家具を作るのだとあらためて感じました。

ホワイトオーク

そういう経緯からROBUSの家具は頑丈さにはとことんこだわってるんです。 だから樹種も選んで使っています。 ROBUSではホワイトオークという樹種を使って、節の数や位置をデザインに取り込んでいるんですが、 そうすると節のない材料を使うよりかえってコストが高くなることがあります。 でも節があるほうが本物の木の生命力を感じますよね。 それに、この地上に二つと同じ物がないわけですから、まさに世界に一つだけの家具なんです。 家具に適していると言われる樹種をいくつも見ましたが、オークの力強い節の出方や木目がいちばん存在感があって、 僕がイメージしている家具に合うんです。
» 後編
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